少女はこわれやすい。でも、強い。
――小田切理紗インタビュー(後)
3 いつもフワフワしてたね
――撮影はドラマの流れに沿ってほぼ順撮りだったそうですが。
小田切理紗「一番最初に撮ったのは、父親役の下元史朗さんと母親のお墓参りするシーンです。でも、あのシーン、とまどいが大きくて……。くるくる回ったりしたから」
――下元さんが「ユカももう十六か」と言ったあとに、「ううん、もうすぐ十七」と言って笑いながらくるくる回ってるところですね。
理紗「脚本を読んで自分なりにつかんでいたユカ像と、監督のユカ像との違いがあって。あれ、ユカってこんな子?って。わたしの中のユカ像が壊れていく……(笑)」
――あそこだけ、お父さんの思いの中のユカみたいなものでしたね。現実のユカじゃない。いきなり、回ってと言われたら、とまどうと思います。でも、その後はどうでしたか?
理紗「監督はわりと素のわたしを活かそうとされていたので、緊張するな緊張するな、リラックス、と常に言われてました。タバコの煙をはたく動きをするところがありますよね?」
――初めて井上の家に遊びに行くシーンですね。井上がタバコを吸いながら英作文の添削をしていると、ユカが横で大きく手をふってタバコの煙をはたくという。
理紗「カットの声がかかった後に演技じゃなく煙をはたいていたら、そういうのを出していけ、と言われたり。変な芝居グセをつけないように、といつも言われてました」
――渡辺監督は現場ではどんな感じでしたか?
理紗「色んなお話をして色んなことを教えてくれました。撮影中はそのシーンについてのこと、それが終わっても、わたしがこれからどうしたらいい、とか、いままでこんな映画を撮ってこんな思い出がある、だとか。素直に芝居していきなさい、というアドバイスや、あとは、スクワットをして鍛えなさいと,,,」
――スクワット?
理紗「吉永小百合もやってるらしいぞ、なんてことも(笑) それから、毎日鏡を見て、自分の表情の研究をしなさい、というアドバイスも頂きました」
――渡辺監督は現場では厳しいと聞いてますが。
理紗「厳しい監督だと聞いてました。でも、現場で理恵子役の里見(瑤子)さんに、厳しいけど女性には優しいから、と教えて頂いたりしました。わたしは幼い頃から体育会系な環境、怒鳴り怒られながら育ったんです。だから、そういうことには慣れていたんですね」
――でも、井上役の田谷さんは、いやあ、監督にしごかれました、と言ってますね。横にいてちょっと辛くはなかったですか?
理紗「現場の雰囲気は明るいほうがいいだろうし、萎縮しちゃいけない、と思って田谷さんがしごかれていても、とりあえず横で笑っていた、という(笑)。わたしまで落ちこんじゃいけないって。もちろんちゃんとその指導も聞いていましたよ。でも、助監督の佐藤(吏)さんにも言われたんですけど、小田切さんは監督が怒ってる横で、いつもフワフワしていたね、って。そんなふうでした(笑)」
――田谷さんと二人きりの芝居が多かったと思うんですが、小田切さんから見て、田谷さんはどういうひとでしたか?
理紗「井上役の田谷さんは普段のイメージと役のイメージが近い人で、素直に演技に入らせてくれる存在でした。でも、お芝居がどうこうなんて、わたしは自分がこれだけ演技するということで精一杯でした」
――映画の真ん中あたりで、ユカと理恵子の女対女の対決シーンがありますね。あのシーンあたりになると、小田切さんも完全にユカになりきっている感じがしたんですが。
理紗「あの里見さんとのシーンは、こんなになるとは思っていなかったのでビックリしました。あんなにキツイ、怖いシーンになるなんて……。監督は、女性を本当は怖いもの、と思っているのかな、なんて里見さんと話してました(笑)」
――ユカが理恵子に向かって、「わたしがあんただったら、浮気なんてさせない。子どもができたから許すなんて」と言って笑う芝居がありますね。前に渡辺監督にインタビューしたとき、理紗のあの芝居はよかったと言ってました。理紗はユカという役をきちんと理解している。それは演技経験を積んだからできるってものじゃない。インテリジェンスと想像力を普段からどれだけ持っているかだ、と。その言葉を聞いて、どう思いますか?
理紗「監督の言葉、とっても嬉しいです。あの時の芝居はあのせりふにとても共感したんです。もし小田切理紗自身が同じ状況になってもあんな風に言うかもって、、〔もし〕ですよ(笑)私はいつまでも成長し続ける人でいたいんです。1人の女性として、俳優として、中身ある素敵な人になるためこれからも様々なことを経験したいです。」
4 少女はこわれやすい。でも、強い。
――渡辺監督も言ってましたが、ラストのユカと井上の長い二人芝居は大変でしたか?
理紗「大変でした。撮影も予定の倍かかってしまって、一日の撮影の予定が二日かかって。場所も大変でした。部屋の中でロウソクをたくさん灯しているし、スタッフさんも沢山いるし、ノイズが入るからエアコンも入れてなくて、酸欠気味でした」
――渡辺監督はラストの長い芝居の中に山場が三つあると言ってました。その三つの山場で小田切理紗をどうやって魅力的に見せるかが大変だったと。小田切さんはどうでしたか? 山場みたいなことを考えていましたか?
理紗「現場に入るまでは色々と考えていました。けど現場では酸欠気味だったりたので(笑)決意の気分を保ち続けることと、撮るシーンへの気持ちをもっていくことで精一杯でした。カット数もとても多かったりしたので混乱しないようにって。」
 
――小田切さんは『片目だけの恋』の撮影をふりかえって、こんなことを書いてますね。
<そんな撮影の中で最も大変だった(印象深い)のはラストシーン。
井上(田谷淳)とユカの長い2人きりの大切なシーン。
私はこのシーンでは少女の顔ではなく女の顔、そして純粋ゆえのまっすぐな強さをだしたいと思っていました。とても難しいシーン、ずっと気持ちを高めていました>
ずっと役に入りこんで集中しているのは大変だったのでは?
理紗「撮影が終わってから、家の近くまで車で送ってもらったんです。車から降りて少し歩いて帰ったんですけど、その辺りの記憶がないんです、放心しちゃって。スイッチOFFがしっかりしていたみたいで、現場では大丈夫でした。」
――それから、こんなことも書いてありますね。
<そしてクランクアップ!!私はクランクアップの声を聞いた瞬間、思わず泣いてしまいました。色んな想いが溢れてしまって・・・>
理紗「終了直後の現場で、もう自分でも何で涙が出てくるのか分からないくらい泣きました。おさまったと思っても、相手役の田谷さんを見るとまた涙があふれてきちゃって。撮影中も、ユカに気持ちが入ってる時はあんまり田谷さんを見れなかったりしたんですけど……」
――完成した映画を見てどうでしたか?
理紗「とにかく画がキレイでびっくりしました。キレイな映像だなあって思いました 自分ががこんなふうに映るんだあ、なんて。撮影の合間もフッとモニター画面なんかで観ると、こういう画になってるのかぁ、って。撮影の鈴木(史郎)さんの、なにかモノ越しに撮ったり、ガラスの板の反射を使ったりするワザに驚きました」
――『片目だけの恋』に出て何か変わったことなどはありますか?
理紗「終わってみて、やる前とはお芝居に対する気持ちとかが違ってきました。こうしなきゃ、ああしなきゃ、というこれからの課題も増えましたし。鏡を見なさい、って言われたことや、自分がどう映るのかがこれで実感できたのはよかった。もっと演技がやりたい、もっともっとうまくなりたい、という気持ちが強くなりました。たくさんのアドバイスをもらって、渡辺監督には感謝!です」
――最後に、これから映画を見るひとに向けて(特に女性に)メッセージをどうぞ。
理紗「女のひとなら、絶対、十代の頃にこの映画みたいな葛藤というか、それに似たものを一度は経験してきてるはずだから、納得するところがあると思います。ただ、大人になってしまうと、あそこまで素直に自分の感情に忠実に行動できない。世間体だとかなんだとかが身についちゃって。だからこそ、ユカが強いな、ってある意味思うんじゃないかな。監督がおっしゃってた「少女はこわれやすい。でも、強い」ということを女性はとても強く感じるかもしれません。『片目だけの恋』、是非観て下さい」
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小田切理紗インタビュー(前)
小田切理紗主演『片目だけの恋』は8月28日(土)よりユーロスペースにて公開!
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